[論文]CHARGE症候群原因遺伝子CHD7の機能解析にQuartz-Seqが貢献

慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、神山淳准教授、MuhChyi Chaiさん、佐野坂さんらとの共著論文が出版されました。

MuhChyi Chai, Tsukasa Sanosaka et al. Chromatin remodeler CHD7 regulates the stem cell identity of human neural progenitors. Genes Dev. February 9, 2018

CHARGE症候群の原因遺伝子CHD7が、ヒト中枢神経系神経前駆細胞の性質維持に関連しているという報告です。前駆細胞の一部が、神経堤様前駆細胞に分化転換していました。我々が2013年に開発した1細胞RNA-seq法 Quartz-Seqが使われています。

慶應大の岡野研は、うちのラボからQuartz-Seqを導入して、自分らで実施できるようになりました。岡野先生と神山さんの素晴しいマネジメントのもと、優秀なテクスタさんが、いつでもデータが出せる状態になっていて、今回の論文に結びつきました。我々の方法の再現性が高いことを示して頂き、感謝です。

今回の論文は、疾患iPS細胞、ゲノム編集、エピゲノム、1細胞RNA-seqと最新技術を駆使しまくりでの希少疾患メカニズム解明でした。その一端を担えたことを誇りに思います。このようなメディカルサイエンスも含む多様なテーマで貢献できるのが、技術開発の醍醐味。First authorのひとりであるMuhChyi Chaiさんも、この論文で博士号を取得できるとのこと。おめでとうございます

少し裏話をしますと、なにげに、今回の論文で使っている方法は、ただのQuartz-Seqではなく、未発表の96ウェルベースQuartz-Seqだったりします。ライブラリプレップ報もLIMprep(ライゲーション)でなく、Nextera を使うという、幻のバージョンです。我々のラボではQuartz-Seq Nextというコードネームが付いていました。

Quartz-Sea Nextを発表しなかったのは、たくさんの細胞が実施できるQuartz-Seq2と、そろそろpublishになる1細胞完全長Total RNA-seq開発に集中したからです。このような形で、Quartz-Seq Nextが世に出てくれたことは、我々としても非常に嬉しいことです。