ハイブリッドクラウドに関する共同研究がNII「クラウド活用事例」で紹介されました

ライフサイエンスのデータ解析クラウドの構築技術について、国立情報学研究所(NII)と共同研究を行ってきました。具体的には、理研内のオンプレミスなPCクラスタとAmazon AWSのようなパブリッククラウドをNIIが提供するオンデマンドクラウド接続サービスで、繋げて利用する方法を開発しました。

これにより、理研内PCクラスタに計算ジョブを投入すると、自動的にパブリッククラウドから計算ノードを調達し、計算の設定や計算自体が自動的に行われます。計算が終了したクラウド上の計算機は自動的にシャットダウンします。このようなハイブリッドクラウドを利用することで、計算機の調達・維持管理コストを減らし、普段使っている計算機から、自由にいつでもどこでも大量の計算ができるようになります。

今回、この共同研究で利用しているNIIのオンデマンドクラウド接続サービスの利用事例としてインタビューを受けました。紙面の関係で、技術的な詳細については割愛されていますが、その使い勝手や意義について述べています。

インタビュー記事はこちら。NIIクラウド活用事例 理化学研究所

これまでのクラウドに関わる活動については以下をご覧ください。



高速検索エンジン「CellFishing.jl」を開発 -大規模1細胞データベースから類似細胞を瞬時に検出する手法-

大規模1細胞データベース(DB)から、類似細胞を高速検索するソフトウェア「CellFishing.jl」を開発しました。

本研究成果は、細胞分化や臓器・器官発生などの基礎研究から、再生医療における移植細胞の有効性・安全性評価、創薬などの発展に貢献すると期待できます。

多細胞生物が持つ数百種類の細胞の機能を理解する方法として、1細胞ごとにRNAの種類と量を計測する「1細胞RNAシーケンス法]」があります。これにより、共同研究チームを含め、世界中が協力してヒトの全細胞種の遺伝子発現データをデータベース化する研究が進行中で、次々とデータが公開されています。世界中の研究者がこれらのDBと自分のデータを比較できれば、疾患の原因や薬剤応答を細胞レベルで精緻に理解できるようになります。

今回、我々は、1細胞発現データを検索するアルゴリズムを開発し、百万個の細胞DBから、高い検索精度を保ちつつも、1細胞あたり0.63ミリ秒で類似細胞の検索に成功しました。これは既存の方法の100倍以上の速さです。さらに、類似細胞で特徴的に働く遺伝子を高速に検出する機能も開発しました。

本研究は、英国の科学雑誌『Genome Biology』(2月11日付)に掲載されました。詳細は以下の日本語プレスリリースをご覧ください。

理研からのプレスリリース: 高速検索エンジン「CellFishing.jl」を開発 -大規模1細胞データベースから類似細胞を瞬時に検出する手法-
AMEDからのプレスリリース: 高速検索エンジン「CellFishing.jl」を開発 -大規模1細胞データベースから類似細胞を瞬時に検出する手法-

Kenta Sato, Koki Tsuyuzaki, Kentaro Shimizu, Itoshi Nikaido, “CellFishing.jl: an ultrafast and scalable cell search method for single-cell RNA-sequencing”, Genome Biology10.1186/s13059-019-1639-x

ソースコード: Github: CellFishing.j

RNA二次構造予測から見る転写領域の配列的制約

理研バイオインフォマティクスセミナーを実施します。

【タイトル】 RNA二次構造予測から見る転写領域の配列的制約
【講師】 河口 理紗(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士課程3年)

【要旨】 近年の大規模なRNA二次構造解析の結果から、mRNAに存在する多様な二次構造特性と機能との関連性が明らかになってきました。しかし実験・計算機的な限界から、スプライシングに大きく影響を及ぼすといわれているイントロン領域に関しては、その全体像は未解明でした。
そこで我々はParasoRというRNA二次構造並列計算ソフトウェアを開発し、これによりイントロンを含むpre-mRNA配列やゲノム全体に対する様々な二次構造シミュレーションが可能となりました。
今回は、RNA二次構造予測と実験的な解析手法について、またゲノムワイドな二次構造予測によって明らかになった、転写物における二次構造の安定性と、スプライスサイト周囲の特徴的な二次構造についてお話ししたいと思います。

参加申し込み

https://atnd.org/events/79024

参加対象者

ライフサイエンス・バイオインフォマティクスに関連する研究者、技術者、学生。アカデミアでも企業でも可。

理研外の参加者の方へ

理研外の方は、西門守衛所にて一時入構手続きを行う必要があります。
手続きの際は 行き先:情報基盤棟 尾崎、目的:セミナーとしてください。
理研へのアクセス、構内地図はこちらです。

連絡

理化学研究所 情報基盤センター
バイオインフォマティクス研究開発ユニット
尾崎遼